社会福祉士通信レポート実例 社会保障
私が、社会福祉士国家試験受験資格取得のために受講した社会福祉士一般養成課程（通信課程）で、実際に提出したレポートです。
『社会保障』の課題、「現代の社会情勢を述べ、社会保障の課題を述べなさい。」（2019年3月）。
この課題は、統計データを多用します。
テキストに掲載されている統計データは、最新のものではない可能性が高いです。ですからデータは、総務省や厚生労働省のホームページなどに掲載されている最新のデータを用いましょう。
科目名／社会保障
課題／現代の社会情勢を述べ、社会保障の課題を述べなさい。
点数／90点 評価／優
わが国の社会保障を取り巻く社会情勢の変化を、人口・労働・家族の側面から述べる。
①人口の変化：わが国では、昭和22 (1947)年に4.54だった合計特殊出生率は、平成29 (2017)年には1.43となり少子化が急速に進んでいる。
少子化が進む一方で高齢化も進んでいる。日本人の平均寿命は、昭和25 (1950)年に男60歳・女63歳だったが、平成29 (2017)年には男81歳・女87歳にまで上昇し、世界最高水準となる。
平均寿命の延びと合計特殊出生率の低下が重なり、現在のわが国は、超高齢社会にあり、総人口は減少し始めている。とりわけ労働力人口の減少により経済成長が滞ると、社会保障制度を財政的に支えることが困難となる。
②労働の変化：長く続いた日本的経営（終身雇用）と呼ばれる仕組みは終わりを告げた。
変化の一つに非正規雇用率の増加がある。男性で平成２(1990)年に8.7％だった非正規雇用率が、平成29 (2017)年には21.9％となる。女性では平成29 (2017)年で55.5％が非正規職である。
日本的経営による企業保障の仕組みは、非正規雇用者はその恩恵を享受できない。以上のような働き方の変化によって、社会保障制度に対する期待が今まで以上に高まっている。
③家族の変化：わが国の社会保障制度創設当初は、「夫が外で働き、妻は家庭を守る」という男性稼ぎ主モデルの家族形態であった。このあり方は、意識の上でも実態の上でも変化してきた。昭和55 (1980)年当時、夫婦共働き世帯は614万世帯であったのに対し、男性雇用者と無業の妻からなる世帯は1,144万世帯であった。平成29 (2017)年には、共働き世帯1,188万世帯、片稼ぎ世帯641万世帯と完全に逆転した。
男性稼ぎ主モデルが崩れる中で、社会保障制度も変化に対応することが求められている。
また、老親扶養に関する変化がある。公的年金制度の確立以前は、老親の扶養は子どもの責任と考える人が多かった。現在は、老後を子どもに頼ろうと考える人は少数派である。
このような変化の背景には、公的年金制度の発達という事実がある。昭和55 (1980)年当時、公的年金で生活費を賄う高齢者は34.9％だったが、平成27 (2015)年には70.8％になっている。
このように現在は、公的年金制度抜きに高齢者の生活は考えられないところへきている。
社会保障制度は負担と給付のバランスの上に成り立っている。そのバランスについて国民的な合意を形成することが出発点となる。
また、社会保障給付費がどう使われるかにより、社会保障の果たす役割は大きく変わるため、量的課題に加え質的課題が重要となる。
例えば前述のように、労働や家族の変化により、現在の日本社会では、仕事と生活の調和（ワーク・ライフ・バランス）が失われている。育児期間の扱い、育児休業中の所得保障をはじめ、仕事と生活の調和を実現するために社会保障制度が果たすべき役割は大きい。
わが国の社会保障制度は、財政的均衡はもちろんのこと、このような質的課題にも取り組んでいくことが求められているのである。
〈参考文献〉
『社会保障』 中央法規出版
『社会福祉学習双書 社会保障論』 全社協
『はじめての社会保障』 椋野美智子・田中耕太郎 有斐閣
『社会保障概説』 佐口卓 光生館
『平成29年 国民生活基礎調査の概況』 厚生労働省
〈次回予告〉
『相談援助の理論と方法』グループを活用した相談援助についてまとめなさい
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