「老人ホーム」と「刑務所」の違い
ツイッターで、特養のことを「刑務所か!」みたいに言った方がいらっしゃるようで、その事でタイムラインが賑わっていました。
老人ホームと刑務所は、もちろん全く違うものです。だけど、似ているところもあります。
私は、職場で「高齢者虐待」や「身体拘束」の勉強会を行う時に、「老人ホーム」と「刑務所」の違いについて、という話しをすることがあります。
今日は、その話をしてみたいと思います。
私は、地元の刑務所の見学をさせてもらったことがあります。その事を踏まえて、老人ホームと刑務所を比較してみましょう。
食事について
老人ホームでは通常、1日3食の食事が提供されますね。
刑務所ではどうでしょう?
刑務所でも1日3食の食事が提供されます。
私が見学させてもらった刑務所では、ご飯には麦が混ぜられていました。白米と麦の比率は聞きましたが忘れてしまいました。
パン食の日もあるそうです。
パンは、刑務所内で焼いたパンが提供されるそうで、受刑者からは好評だそうです。
刑務所でも大晦日にはお蕎麦、お正月にはおせち料理が出るそうです。
お花見の季節には、お花見弁当が出てグランドでお花見をするそうです。
入浴について
老人ホームでは、週2回以上の入浴や清拭が義務付けられていますね。
週2回以上が義務ですけれど、週3回以上できているところはあまりないと思われます。
私の勤める所でも、週2回しか実施できていません。
刑務所でも週2回だそうですが、私が見学させてもらった刑務所では、夏場は週3回に加えて、1回のシャワーができるとのことです。
娯楽について
老人ホームではレクリエーションなどが提供されますね。
刑務所では、老人ホームのようにレクリエーションのようなことが頻繁に行われることはないと思われます。
だけど、テレビを観たり、読書をしたりはできるようです。
時には、大物演歌歌手などが慰問に来たりすることもあるようですが、そんなことはめったには無いでしょうね。
退所することは?
老人ホームを退所する時は、ほとんどが亡くなった時か入院する時くらいですね。
自立して家に帰ることができる人はほとんど居ませんね。
刑務所は、日本の場合終身刑はありませんから、服役中に亡くなる可能性はありますが、刑期を終えたら出所することができますね。
ちなみに死刑囚は刑務所ではなく拘置所に収容されます。
費用は?
さて、ここが大事なところです。費用はどうでしょうか?
老人ホームは、軽費老人ホームなどもありますけれど有料ですね。タダで入ることはできません。
刑務所はというと、刑務所で過ごすことに対して費用を請求されることはありませんね。
刑務所はタダです。
こうして考えてみると、刑務所の方がよく思えませんか?
ご飯も食べられて、お風呂にも入れて、多くはないけど娯楽もあって、上には書いていませんけど仕事(労働)もあって、おまけにタダですから。
実際に、暮らしが苦しいために、わざと罪を犯して刑務所に入る方もいらっしゃるようですから。
そのようにしてまで刑務所に入りたい人がいるくらいですから、刑務所での暮らしもまんざらではないのかもしれません。
大きな違いは「自由」か「束縛」されるか
老人ホームと刑務所の違いについて書いてきましたが、大きな違いは自由があるか、束縛されるかということだと思います。
刑務所では、あらゆる行動が束縛されます。自由に行動できることなどほとんどないのだと思います。
老人ホームで高齢者が束縛されていたとしたら、それはもはや刑務所以下になってしまいます。
だって束縛されたうえにお金を取られるわけですから、刑務所以下ですよね。
だって刑務所はタダなのですから。
職員が上からモノを言ったら刑務所以下
刑務所では、職員は受刑者に対して命令しますね。
老人ホームで職員が入居者に対して上からモノを言ってしまったら、それはもはや刑務所以下になってしまいます。
だって上からモノを言われたうえにお金を取られるわけですから。
山本譲司の「獄窓記」をオススメ
最後に山本譲司著「獄窓記」を紹介したいと思います。
この本は、ツイッターでフォロワーさんにオススメいただいた本で、読んで感銘を受けたものです。
中に出る受刑者の言葉がとても印象に残っています。
刑務所には「自由」はないが「不自由」もない
というものです。
つまり、刑務所では束縛はされるが、暮らすことに不自由はしない。
お金はなくても不自由なく暮らすことができる。
障害などがあっても差別的な扱いを受けることなく、不自由なく暮らすことができる。といった意味合いです。
「自由」の反対は「不自由」ではありません。
「自由」の反対は「束縛」です。
老人ホームで暮らす方は、何らかの生活の「不自由」を抱えています。
そうした「不自由」を、介護を受けることにより解決するために老人ホームで暮らしています。
そうした不自由を抱えたうえに、職員に上からモノを言われ、束縛されてしまっては、もはや刑務所どころか、刑務所以下になってしまうのです。
そんなことを、「獄窓記」を読んで強く感じました。