介護保険で提供する「健康で文化的な生活」とは?
前回の記事では、介護保険事業はこの国の社会保障のひとつで、憲法第25条で規定された「生存権」「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するもの、ということを書きました。
そして、介護保険事業は、最低限度の生活保障だから最低限度のサービスでよいのか?というところで話を終わりました。
今日は、介護保険サービスは「最低限度のサービスでよいのか?」ということについて、私の考えをしたためてみたいと思います。
介護保険事業所の収入について
私たち介護保険を根拠に事業を行っている事業所の収入の大半は、介護報酬(介護保険給付)によるものです。
言うまでもなく介護報酬は、サービスを提供すればいくらでも請求できるものではなく、要介護度に応じて上限が決められています。いわゆる「区分支給限度額」というものです。
つまり私たち介護保険サービスを行う事業所の収入のMAXは、要介護度5の利用者を定員いっぱいまで受け入れた時がMAXとなりますね。
もっとも要介護度5の方で定員いっぱいにするなんてことは現実的ではありませんから、ここでは仮に平均要介護度3くらいで定員いっぱいが事業所の収入のMAXということにしておきましょう。
このように事業所の収入は、定員数と要介護度で決まってしまいます。
その中でできるだけ利益をあげるためにはどうすればよいでしょうか?
そんなことはいちいち言わなくてもわかりますね?費用・経費を抑えることですね。
介護事業所で最も大きな経費は人件費
介護事業所で最も大きな経費は何でしょうか?最も大きく、しかも毎月必ず必要な経費(固定費)は何でしょうか?
これも言うまでもありませんね。
従業員に支払われる給与、つまり人件費です。
ですから介護事業所は、法令で定められた最低限度の人員基準を充たし、なおかつできる限り利益を出すことのできる人員配置をします。
介護事業所で「人員不足」が叫ばれる理由
世の中の多くの介護事業所で、「人員不足」が叫ばれていると思います。しかし、不足しているといっても、法令違反をしている事業所は無い(少ない)でしょう。
配置基準を充たさなければ減算(介護報酬の減額)など処分対象になりますから、基準は満たしてると思います。
私たちは事業所内で「人手不足」を感じているかもしれませんが、これが介護保険のシステムなのです。この国の社会保障のシステムなのです。
定められた介護報酬の中で、最低限の、できる限りの人員配置を自治体などは法令で定めているのです。
それが憲法第25条で規定された「生存権」「健康で文化的な最低限度の生活」の保障と理解するのです。するしかないのです。
私たちはそういう中で介護を提供していると理解するのです。するしかないのです。
それがこの国の介護保険、社会保障のシステムなのだから。
サービスを「量的」に増やすことは困難
最低限度のサービスという中では、「量的」にサービスを増やすことはできません。
例えば、量的に人員の数を増やして経営が赤字になってしまっては、それは本当に事業所が身銭を切ってサービスをしていることになってしまいます。
それではボランティアになってしまいます。
最低限度の生活保障という中では、「量的」にサービスを増やすことは困難を極めます。
それはもう、私たちが必死で動いて動いて、走って走って、ということになってしまうのです。現にそうなっているのが今の介護の現場ではないでしょうか?
だったら、あきらめるしかないのでしょうか?
例えば、多くの老人ホームなどの事業所では週2回入浴を提供していると思います。私の勤める事業所でもそうです。
これは、運営基準で定められた最低限度の入浴回数だからです。2回以上の入浴や清拭などを行うことが運営基準で定められています。
つまりそれが、この国の保障する「最低限度の健康で文化的な生活」なのです。
私たちは、それを提供するための最低限度の人員配置をしています。
もしも、現在の人員配置基準で、週3回以の入浴を求められたらどうでしょう?
残念ながら、私の勤める事業所でそれを提供することは困難でしょう。
それを行うためには、人員配置基準を引き上げて、介護報酬も引き上げてもらわなければなりません。
何度も言いますが、それがこの国の保障する「最低限度の健康で文化的な生活」なのです。
言い換えれば、「最低限度の健康で文化的な生活」の基準なのかもしれません。
サービスを「質的」に高めることはできるのでは?
サービスを「量的」に増やすことは困難でも、「質的」に高めることはできないでしょうか?
例えば、入浴の回数は週2回であきらめてもらうしかありません。だけど、その2回の入浴を、できる限り気持ちよく入ってもらうようにすることはできるのではないでしょうか?
ここからが本題になるのですが、長くなってきましたので続きは次回と言うことで・・・。
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