老人ホームでパジャマへの更衣介助は必要か?
ツイッターで
『パジャマ更衣をなくしたい』
『何も言わない人にパジャマ更衣は要らない』
という内容のツイートを見ました。
今日は、更衣介助について考えていきたいと思います。
夜勤入り・明けの更衣介助は大変な「作業」
夜勤入り・明けに一人で多くの利用者の更衣の介助は大変な「作業」ですね。
「パジャマ更衣をなくしたい」と言いたくなってしまう気持ちもわからなくはないです。
だけどそれを人前で言ってはならないし、更衣をなくしてはならないと思います。
「必ず利用者全員に対してパジャマへの更衣を行いなさい!」とは言いません。むしろ「更衣を行わない」という選択が必要な場合もあります。
それらについて、私の考えを述べていきたいと思います。
利用者との契約・約束について
はじめに、利用者と家族との契約、約束についてお話します。
私は、介護付き有料老人ホームの生活相談員・計画作成担当者という立場ですから、入居者や家族との契約やサービス計画書の作成・説明を行います。
契約および重要事項説明書の内容を説明するには、1時間以上の時間がかかります。内容をしっかりわかっていただくためには、最低でもそのくらいの時間がかかってしまいます。
重要事項説明書の中には、介護保険サービスで提供するサービスの内容が書かれています。
介護保険サービスの内容について
介護保険で提供するサービスには、「排泄」「入浴」「食事」「機能訓練」「生活相談」などがあり、その中のひとつに「更衣・整容」があります。
前提として、契約の時に「更衣・整容」を「介護保険のサービスとして行います」と説明し利用者・家族の同意を得ていますので、それを行わないということは重大な契約違反となりますね。
重要事項説明書はどこの事業所にもあり説明と同意が義務付けられています。なので、あなたの事業所にも必ずありますし、それが閲覧できるようになっているはずです。
要介護度ごとにどのようなサービスを提供するのか等も書かれていると思いますから、事業所の職員も重要事項説明書を読んで、事業所が利用者とどんな約束をしているのかを理解しておく必要がありますね。
機能訓練についての説明
私は、介護保険サービスの内容を説明する時に「機能訓練」のことを特に注意して説明しています。
なぜ機能訓練を注意して説明するかというと、機能訓練と言いながら、理学療法士や作業療法士を配置して専門的なリハビリを提供しているわけではないからです。
理学療法士や作業療法士を配置して専門的なリハビリを提供しなければ機能訓練と言えないわけではありません。
だから、それがどいうことかを注意して説明しています。
説明としてはこんな感じで説明しています。
機能訓練についてですが、私たちは理学療法士や作業療法士を配置して、専門的ないわゆるリハビリを提供しているわけではありません。
私たちは「生活リハビリ」と言っています。
「生活リハビリ」とはどいうことかというと、生活の中でできる限り体を動かしていただき寝たきりを防止しようという考え方です。
ご自身では行動のできない、いわゆる「寝たきり」と言われるような状態の方でも、寝る時はパジャマに着替え、起きたら日中着に着替え、食事の時はリビングへ誘導しリビングで皆さんと一緒に食事をしていただき、午前と午後には皆さんとリビングでお茶を飲んでいただき、夕方にはリビングで体操をしていただきます。体操といっても専門的なものではなく、ただのラジオ体操ですが・・・。
レクリエーションなども行っていますが、毎日行っているわけではありません。
今は特にコロナの影響で外部からのボランティアの受け入れを一切行っていませんから、レクリエーションは週一回あるかないかです。
こうして聞いていると何もしていないように感じられるかもしれませんが、生活の中の活動を行うだけで利用者にとっては結構忙しいかもしれません。
朝起きたら服を着替えてリビングで食事をする。食事がすんだら部屋に帰り歯磨きをしてオムツを交換する。10時からはリビングでお茶を飲む。お昼ご飯を食べる。歯磨きをする。お昼ご飯の前後にはオムツの交換をする。15時にはおやつを食べてお茶を飲む。16時からはラジオ体操をする。夕食の前にはオムツを交換する。夕食を食べる。夕食後には歯磨きをしてパジャマに更衣する。
そうした日々の活動を行うこと、ここでの生活そのものを「生活リハビリ」と言っています。
といった感じで説明しています。
更衣を行うことの意味
私は生活相談員・計画作成担当者としてこういう説明をしていますから、更衣を行わないということは、更衣と機能訓練の2つに対して契約違反が発生してしまいますね。
更衣には、ただ服を着替えるというだけではなく、寝たきり防止、褥瘡防止、拘縮防止といった意味も含まれているのです。
契約だから、では介護職には響かない
ここまで説明してきましたが、「契約で約束をしているから」というのは更衣を行う理由としてそれを行う介護職にとっては弱いし響かないのかもしれません。
冒頭で、「夜勤入り・明けに一人で多くの利用者の更衣の介助は大変な「作業」ですね。」と書きました。
ここではあえて「作業」という言葉を使いました。
更衣をただの「作業」ととらえてしまっては、ただただ大変なだけになってしまうのかもしれません。
そこに「意味」「目的」が見えないから、見えないように思えるからただただ大変な作業になってしまうのでしょう。
また、最初の方で「「必ず利用者全員に対してパジャマへの更衣を行いなさい!」とは言いません。むしろ「更衣を行わない」という選択が必要な場合もあります。」ということを書きました。
更衣を行わない選択をするのはどんな時か?について書き進めて行こうと思います。が、長くなってきたので今回はここまで。
次回それについて書こうと思います。