はじめちゃんの介護

主に高齢者介護の話しや各種試験対策など

「受容」「傾聴」「共感的理解」について考える 介護教員講習会

「受容」「傾聴」「共感的理解」について考える

 私は今、介護教員講習会を受講中です。
 介護教員講習会については、どこかでまた詳しく紹介しようと思っています。

 今日は、介護教員講習会で出た課題、「受容」「傾聴」「共感的理解」のエピソードを紹介します。

 「受容」「傾聴」「共感的理解」の定義を考える課題も出ましたが、それについては割愛しますので、それぞれに考えるなりググるなりしてみてください。

 さて、下記が考えた「受容」「傾聴」「共感的理解」のエピソード(架空)です。
 介護教員講習会なので、介護福祉士養成校の学生を対象としたエピソードを考えています。

 

 はじめ君(28歳男)とさとし君(23歳男)は同じ介護福祉専門学校の同級生で友達です。友達というレベルで親友というレベルではありません。

 はじめ君はラーメン店巡りが趣味で、インスタグラムにラーメン店を紹介しています。

《ラーメン好きの人に対する受容》
 はじめ君は、人の価値観はそれぞれでラーメンの好みもそれぞれと考えています。
 だからインスタグラムでラーメン店の紹介はするけれど、ラーメン店の批判をしたり、ラーメンの味を「まずい」と表現することは絶対にしません。
 はじめ君がまずいと感じても、それをおいしいと思って食べている人もいるからです。
 その人たちの価値を否定しないようにインスタグラムにラーメン店を紹介しています。

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 ある日、はじめ君とさとし君が何気ない話をしていた時のことです。
さとし君がはじめ君に

「はじめ君、おいしいラーメン屋知ってるだろ。今度連れて行ってくれよ。」

と言いました。

 はじめ君は、自分が一番気に入っているラーメン屋さんの話をしました。

 はじめ君がさとし君に話した内容は、次の内容です。

《傾聴》
「岡山駅前に、桃太郎そば(仮名)っていう店があるんだ。」
「夜しかやってなくて、夜だから酒飲み相手だと思いきや、メニューはビールとかなくてラーメン1種類しかないんだ。」
「しかも大盛もやってなくて、本当にラーメン1種類のみ、500円でやってるんだ。」
「オヤジさんが一人でやってて、太麺を一玉一玉茹でているから、注文してから出てくるまで時間がかかるよ。」
「スープは、たぶん鶏がらと豚骨のミックスでしょうゆ味。具はチャーシューとメンマとカマボコとネギの超シンプルなラーメンだよ。」

 それを聞いたさとし君は、

《受容》
「へぇ~、すご~い、よくそんな店知ってるね。」
「すごいこだわったラーメンなんだね。」
「ぜったい連れて行ってくれよ。」

 はじめ君は、「じゃあ今日行こうよ」ということで早速今夜さとし君をお気に入りのラーメン屋さんへ連れていくことになりました。

 さて、桃太郎そばに着きました。店の扉をくぐると、オヤジさんが「いらっしゃい!何人?」と声をかけてきます。
 そうです。メニューはラーメン1種類しかないから注文を取らないのです。来店者の人数を確認したらオヤジさんが麺を茹で始めるシステムです。

 15分くらい待ちました。ラーメンが出来上がりはじめ君とさとし君のテーブルに運ばれてきました。ラーメン屋さんとしては結構長い待ち時間です。
 待っただけにラーメンへの期待は高まります。はじめ君はさとし君がどんなリアクションを取るか楽しみにしています。

 ところがさとし君は、ラーメンが出てくるなりこんな言葉を口にしたのです。

「くっさっ!」

 そしてラーメンを口にするなり、

「まっずっ!」

 はじめ君は、その言葉に深く傷つきました。
 さとし君を喜ばせようと思って自分が一番気に入っているラーメン屋さんに連れてきたのに、そんな言葉が出てきたことに激しく傷つきました。

 はじめ君は、普段からラーメンの好みは人それぞれ、ラーメンに求める価値は人それぞれという考えを持っており、決してラーメンを「まずい」などとは言わない人間であるということもあって、さらに深く傷つきました。

 さとし君は、はじめ君がラーメン好きであるということは知っているけど、はじめ君のラーメンに対する思いまでは理解していなかったようです。

 はじめ君はこう思いました。

 ラーメンの好みが人それぞれなのは知っている。だから、「まずい」と思われるのは仕方がない。だけど僕の友達なら、「まずい」なんて言わなくても・・・。

 はじめ君は、このままスルーしようとも思いましたが、さとし君とはこれからも付き合いたい仲だから、自分の思いをさとし君に伝えることにしました。

《傾聴》
「さとし君、君は友達だから言うよ。人の価値観を否定するようなことは言うもんじゃないよ。」
「価値って意味がわかるか?その人が良いとするもののことだよ。」
「例えば、さとし君が大好きな女の子のことを、あんな子のどこがいいの?なんてボクに否定されたらどう思う。」
「人の価値を受容するってことは、人間関係を形成するうえでもっとも大切なことなんだよ。」

 はじめ君の話を聴き、さとし君はこう言いました。

《共感的理解》
「そうだね。よくわかったよ。」
「これがはじめ君の好きなお店で、好きなラーメンなんだね。」
「ボクの好みにはちょっと合わなかったけど、はじめ君の好みを知ることができて良かったよ。」
「今日は連れて来てくれてありがとう。」
「今度はボクの好きな店へはじめ君を連れていくよ。」

おしまい。

 

《追記》
 ここまで自分で書いて気が付いたことがあります。
 はじめ君は、さとし君の思いを受容・傾聴することができていませんね。

 さとし君に「おいしいラーメン屋さんに連れて行ってくれ」と言われた時はじめ君は、さとし君のラーメンの好みを聞くことをしていませんね。
 一方的にはじめ君が好きなラーメン屋さんに連れて行っています。

 さとし君の思いを知ろうとするならば、さとし君のラーメンの好みを聞くべきでしたね。
 介護福祉の用語で言うところの情報収集がまったくできていませんでしたね。
 これでは、ケアマネが利用者に自分の好みで介護事業者を紹介しているようなものですね。

 またはじめ君は、さとし君に苦言を呈した後にフォローを怠っていますね。

「ボクの方こそきびしいことを言ってごめんね。」
「今度はさとし君の好みを聞いて、良さそうなお店を紹介するよ。」

なんてひと言が欲しかったですね。

本当におしまい。