「アットホームな介護サービス」について
介護サービス事業者の中には、「アットホームなサービスを提供します」ということを言う事業者があります。
実は私は、介護サービスにおいて「アットホーム・家庭的なサービス」ということはあまり好きではありません。
しかし、私の勤める事業所のパンフレットの中には、「アットホームな介護サービス」という言葉が使われています。
ですから、アットホームを完全に否定してしまうわけにはいきません。
今日は、「アットホーム・家庭的な介護サービス」について考えてみたいと思います。
アットホームな介護サービスとは?
そもそも、アットホームな介護サービスとはどういう意味なのでしょうか?
「家庭的」であったり、「自分の家のようにくつろげる」という意味合いなのだと思います。
しかし介護現場では、利用者に対しては「敬語」で、とか、「利用者はお客様」です、といったことが言われますね。
「家庭的」「自分の家のように」という意味からすると、それは矛盾しているように思えます。
普通は家族どうして敬語で話したり、家族同士でお客様扱いするようなことはありませんからね。
「アットホーム」と「利用者はお客様」を同時に言うのは、完全に矛盾しているように思われます。
「アットホーム」「介護」「サービス」
アットホームな介護サービスの中には、「アットホーム」「介護」「サービス」という3つのキーワードが含まれています。
それぞれについて考えてみましょう。
「アットホーム」については前述したとおり、「家庭的」であったり、「自分の家のようにくつろげる」という意味合いだと思います。
そもそも「介護」とは?
では次に、「介護」について考えてみましょう。
社会福祉士介護福祉士法、第4章(誠実義務)第44の2には次のようにあります。
社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。
そこからすると、利用者個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるようにすることが「介護」なのかな・・・?
「サービス」とは?
次にサービスについて考えてみましょう。
「サービス」とは、自分でできるけれど人から受けたいもの(こと)ではないでしょうか。
しかし、自分でやるより人にやってもらった方が「楽」は、前述の自立支援の考え方に反しています。
「サービス」では、そのサービスを受けた時に「気持ちよくなれる」ということが大切なのではないでしょうか。
気持ちよくなれなかったり、むしろ嫌な気分になったりするのは、「いらん世話」というのではないでしょうか。
「アットホームな介護」とは?
ここまでの話しを踏まえて、「アットホームな介護」について考えてみたいと思います。
家庭的な介護? 家庭で行うような介護?のことでしょうか?
これは完全な私の持論になりますが、「アットホームな介護」とは、「お世話」のことではないでしょうか。
「介護」と「お世話」の違い?
ここで「お世話」というキーワードが出てきました。
私たち介護職が行う「介護」が、家庭で行うような介護「お世話」で良いはずがありません。
それで良ければ、私たちは何のために介護を学ぶのでしょうか。
ここで、「介護」と「お世話」の違いを考えてみたいと思います。
「介護」は
アセスメント、プランに基づき、専門性を持って計画的に実施され、客観的な評価が行われる。
「お世話」は
世話をする人、主に家族の思いで、計画的ではなく、その場その場で臨機応変に実行される。
「アットホームな介護」とは
プランに基づいた、専門性、計画性を持った介護に、家族のような思いを持ったお世話を付け加えることではないでしょうか。
「アットホームな介護サービス」とは
さらにサービスという言葉が付け加えられ、「アットホームな介護サービス」となると、それを受けることにより「気持ちよくなれる」ということが重要になるのではないでしょうか。
私たちの商品は「人間力」
私たちの「介護」という商品は、「人力」ではなく、「人間力」だと思います。
利用者の目線で、利用者の心を動かす介護サービスを提供するのです。
物理的な物や人の移動はサービスとは言えません。
利用者の心を動かすことがサービスであり、私たちに求められる介護サービスなのだと思います。
介護は機械に置き換えられない仕事
介護は機械に置き換えられない仕事ということがよく言われます。
物や人を動かすだけならば、いずれ介護は機械に置き換えられることでしょう。物や人を動かすだけの介護なら、我々の仕事はそこにありません。
物や人を動かすだけではないから、我々介護職はそこに存在しているのです。
今日はこのくらいで。