「ニーズ」と「デマンド」「〇〇したい」はニーズではない。ケアプラン、サービス計画書の書き方
ケアプランの「ニーズ」の書き方
ケアマネさんの作るケアプランを見ていると、2表のニーズの欄に「〇〇したい」ということを記されているのをよく目にします。というか、たいていのプランのニーズは「〇〇したい」と書かれていたりします。
「ニーズ」とはなにか?
私はというと、ケアマネとしてニーズの欄に「〇〇したい」ということは記しません。
それは、「〇〇したい」例えば「お風呂に入りたい」は、ニーズではなくデマンドだと考えるからです。
そもそも「ニーズ」とはどういう意味でしょうか?そこを理解していなければ、利用者のケアプランを作成するという旅は始まりません。
私たちは「ニーズ」と言っていますが、そもそも計画書の2表には、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」とあります。
つまりそこには、課題が記されるべきなのです。
「お風呂に入りたい」というのが課題ですか?
「お風呂に入りたい」は、その人の欲求や希望ですよね。
お風呂に入りたいけれど入れない理由は何なのか?何が障壁となってお風呂に入ることができないのか?そもそも何のためにお風呂に入りたいのか?お風呂に入るために何が「必要」なのかを明らかにしたものが「ニーズ」なのではないでしょうか?
ここで「必要」という言葉を用いました。それがひとつのキーワードなのだと思います。
「ニーズ」と「デマンド」のちがい
ではそもそも、「ニーズ」と「デマンド」とはどういう意味なのでしょうか?それを理解しなければ話が始まりません。
goo辞書より引用します。
ニーズ【needs】 の解説
必要。要求。需要。「市民のニーズにこたえる」「消費者のニーズが多様化する」デマンド【demand】 の解説
需要。要求。請求。
どちらもほぼ同じ意味合いなので、よけいにわからなくなってしまうかもしれませんね。
ここで注目すべきは、ニーズの解説には「必要」という言葉があってデマンドの方には無いということです。
「必要」こそがニーズ
つまり、要求や需要、その「必要性」が「ニーズ」なのではないでしょうか。
例えば「お風呂に入りたい」というデマンド(要求)に対して、なぜお風呂に入る必要があるのか?お風呂に入ることを実現するために何が必要なのかがニーズなのではないでしょうか。
お風呂に入る必要は?
ではここで、なぜお風呂に入る必要があるのかを考えてみましょう。
- 身体を清潔に保つため
- お湯につかって気持ちよくなるため
- 気持ち良くなって睡眠を促すため
- 全身の状態を確認するため
- 皮膚疾患を防ぐため
- 清潔を保ち褥瘡(床ずれ)の発生を防ぐため
- 臭いから
- 汚いから
- かゆいから
- 匂うと人に嫌われるから
- 汚いと人に嫌われるから
いくらでも出てきそうですがこのくらいにしておきます。
お風呂に入る必要(ニーズ)の例
例えば長期間臥床状態が続いている方のニーズは、
ニーズ:臥床状態が長期となっているため皮膚疾患や褥瘡(床ずれ)の発生が予想される。清潔を保ち皮膚疾患や褥瘡の発生を防止するための援助が必要である。
長期目標:皮膚疾患や褥瘡を防ぐことができる
短期目標:全身状態の観察を行い身体の清潔を保つことができる
サービス内容:入浴・清拭などの援助
なんて感じはどうでしょう?
身体や衣類からの匂いや汚れによって家族関係や対人関係に支障が生じている方のニーズは、
ニーズ:衛生状態を保つことができていないため対人関係に支障が生じている。衛生状態を保ち良好な対人関係を築くことができるように援助が必要である。
長期目標:良好な対人関係を築くことができる
短期目標:身体を清潔にすることができる。
サービス内容:入浴の援助
なんて感じはどうでしょう?
とすると、ニーズを「お風呂に入りたい」のひと言で片付けることはできませんよね。
最近の私の体験より
これはつい最近の私の体験です。
利用者Aさんは、入浴の誘いを拒み、更衣介助・排泄介助・リネン交換を拒み、ベッド上で尿まみれでビショビショになり激しく匂っていました。
せめてシャワーだけでもとAさんを誘いましたが拒まれました。
そこで家族に現状の報告の電話をしたところ、家族が面会に来てくれることになりました。
Aさんに「息子さんが来てくれるからキレイにしましょう」と声をかけると、お風呂には入ってくれませんでしたけれど、清拭をさせてくれました。
Aさんはお風呂に入りたいわけではないのです。息子にキレイな姿で会いたかっただけなのです。
以前は頻繁に会いに来てくださっていた家族も、コロナ禍により頻繁に面会に来ることはできなくなりました。
Aさんがお風呂に入ってくれない、更衣や排泄、リネン交換を拒むのは、家族に会えないからだったのかもしれません。
本当に必要なこと(ニーズ)は、家族に会えるように援助することだったのかもしれません。
介護計画を担当されている方々、今一度ニーズについて考え、自身の作成した計画を見直してみてはいかかでしょう。