介護職の利用者に対する言葉づかいについて
ツイッターで、介護施設での利用者に対する言葉づかいについてのツイートが多く見られたので、それについて私の考えを綴ってみたいと思います。
敬語は、先輩とか後輩とかいう話しではない
私は、利用者に対する言葉づかいは「敬語を中心とした丁寧な話し方で」と考えています。
よくいわれることに、「利用者は人生の先輩だから敬語で」ということがありますが、先輩だから敬語でと考えているわけではありません。
自分より年下でも尊敬すべき人はいます。
尊敬する人には丁寧な話し方で、ということではなく、他人には丁寧な話し方をするべきだと思っています。
例えば、職場の後輩に対して「〇〇くん」と呼んだり、男性が女性に対して「〇〇ちゃん」と呼んだりする場面を目にすることがありますが、そうしたこともよくないと思います。
後輩だからといって、「くん」や「ちゃん」付けはいただけません。後輩に対しても一人の人として「〇〇さん」と呼ぶべきだと、私は考えています。
後輩に対して「〇〇くん」と呼んだり、女性に対して「〇〇ちゃん」と呼んだりするのはなぜでしょうか?
子ども・女性・高齢者などを見下す性質
自分より後に入社したから、自分より年下だからと見下しているから「〇〇くん」と呼ぶのではないでしょうか?
女性を蔑視しているから、女性を軽視しているから「〇〇ちゃん」と呼ぶのではないでしょうか?
つまり、その人のことを自分より下に見ている、見下しているからではないでしょうか?
同様に施設を利用する高齢者に対してタメ口で話すのは、その人のことを見下しているからではないでしょうか?
「そんなことはない」「見下してなんかいない」とたいていの人は言うでしょう。
だけど、子供や女性、年下、老人などを知らず知らずのうちに見下してしまうのが人間の性質なのではないでしょうか?
そうした人の性質が、高齢者しかいない施設という閉鎖的な空間の中で、知らず知らずのうちに出ているのではないでしょうか?
適切な距離感を保つために丁寧な言葉づかいが必要
介護職という仕事をするうえでの利用者に対する言葉づかいという意味では、利用者との適切な関係、距離感を保つために丁寧な言葉づかいが必要だと考えています。
敬語では利用者と親しくなることができない、利用者との関係を築くことができない、ということを聞くことがあります。
それに対して私は、利用者とは親しくなりすぎてはいけない、友達や家族のような関係になってはいけないのだと考えています。
介護職と利用者、という関係、距離感を保つために、丁寧な言葉づかいが必要なのだと考えています。
楽器店での私の体験
例えばお店に入った時、常連さんで賑わっていて居心地が悪かった、という体験はないでしょうか?
小さな飲食店などではよくある光景だと思います。
私は趣味である楽器を演奏していますが、楽器屋さんに行った時にそういう体験をすることが多々あります。
楽器屋さんに行くと、常連さんがたむろしていて、店内でギターなどを弾き、店の人と楽しそうに話をしていたりすることが多々あります。
楽器屋さんには、大した用もないのに店を訪れてたむろしている客が居たりするのです。
そうした店に私が行った時、買いたいものがあってもなんか買いづらかったり、店員さんに聞きたいことがあっても聞きにくかったりするのです。
お店を覗いた時、常連さんがたむろしていると、その時点でもう入店する気が無くなってしまうのです。
なんか嫌な気分になってしまうのです。
お客さんの方は、自分は常連さんだという意識があるから、そこにたむろして長居をしているのだと思います。
お店の方は、そうしたお客さんに対してどのように考えているのでしょうか?
客のひとりとして疑問でしかありません。
介護施設でも似たようなことが言えるのではないかと思うのです。
不適切な距離感から感情のトラブルに発展する
利用者は、毎日そこで暮らしているわけですから、もちろん常連さんではあります。
だけどもそこで、利用者と介護職員との距離感が保たれていなければ、利用者はお店にドカドカと居座る客のように、職員の心にドカドカと入り込んできてしまいます。
職員の方も、利用者の心にドカドカと入り込んでしまいます。
それが必ずしも悪いわけではないと思います。
しかし、距離感が保たれていなければ、お互いに感情のトラブルに発展してしまうこともあると思うのです。
入り込み過ぎると、感情のトラブルが起きやすくなると思うのです。
そうしたトラブルを避けるためにも、利用者と介護職員との距離感は適切に保たれるべきだと思います。
そうした距離感を保つために、利用者に対する言葉づかいは敬語を中心とした丁寧な言葉づかいである必要があると考えます。
親しい関係は必要だと思います。だけど、親しくなり過ぎない適切な関係、程よい関係が必要なのだと考えます。
だから介護はむずかしいのだ!
私たち介護職は、そういうむずかしい場面に立っているのです。
だから介護はむずかしいのです。
私たちの介護という仕事は、むずかしい仕事なのです。
むずかしい場面に立たされるたび考え続ける、それが私たちの介護という仕事なのです。