はじめちゃんの介護

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『管理管理の綺麗な牢屋』発言に対して思うこと 老人ホーム 介護

『管理管理の綺麗な牢屋』発言に対して思うこと

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 先日は、特養(特別養護老人ホーム)のことを「刑務所か!」みたいに言う方がいて、ツイッターのタイムラインがにぎわいました。

 それをもとに、「老人ホーム」と「刑務所」の違いについて、という記事を書きました。

hajimechan2001.hatenablog.com

『綺麗な牢屋』に対する嫌悪感

 今度は、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の経営などをなさっているある方が、施設のことを『綺麗な牢屋』と表現されてツイッターのタイムラインがにぎわいました。

 『綺麗な牢屋』という表現に対して、嫌悪感を抱いた方も多いかと思いますが、私もその一人です。
 『綺麗な牢屋』という表現を目にして、何か侮蔑(ぶべつ)されたような揶揄(やゆ)されたような、嫌な気持ちになりました。

実際に「牢屋」と言った利用者

 その表現を見て嫌な気持ちにはなりました。しかしながら、私がこれまで(9年間)介護現場で務めてきた中で、少なくとも2名の利用者の口から、同じようなことを言われたことがあります。

 おひとりの方は、認知症のある方でした。
 徘徊のあるその方の後ろを、いちいちついて歩いている時に、
 「ここは監獄か!」
 と言われました。

 もう一人の方は、少し認知症はあるものの、自身でしっかりと判断のできる方でした。

 夜勤中、深夜0時頃だったと思います、オムツの交換に行った時にいきなり、
 「いらんことをするな!」
 と大声で怒鳴られました。

 その後に、
 「座敷牢に入れられているようなもんだ」
 と言われました。

 どちらも私にとってショッキングなことでしたので、はっきりとその時のことは覚えています。

 最初の認知症のある方に対しては、少し時間を置いて、
 「先ほどは申し訳ありませんでした」
 という言葉をかけました。

 するとその方は、
 「そんなにていねいに言ってもらって恐縮です」
 というようなことを言ってくださいました。

 次の方の場合は、「いらんことをするな!」と怒鳴られたので、私もついカッとなってしまい、
 「いらんこととはなんですか!」
 と大きな声を出してしまいました。

 その後10分ほど頭を冷やし、再びその方の部屋を訪室し、
 「先ほどは大きな声を出して申し訳ありませんでした」
 と謝りました。

 するとその方は、「座敷牢に入れられているようなもんだ」と言った真意を話し出しました。

 どうやら、「自分で何とか家でやって行きたいのに息子にここに入れられている」ということを「座敷牢に入れられている」という言葉にしたようです。

老人ホームを「牢屋」と言う理由

 最初の方の場合は認知症があります。
 それにより、家での本人の暮らし、あるいは家族の暮らしに何らかの支障が生じ、やむを得ず老人ホームで暮らしています。
 本人には、老人ホームへ入るということは知らされていなかったのかもしれません。
 認知症のある方の多くは、老人ホームへ入るということを知らされることなく老人ホームへ入っています。ほぼ騙されるような形で入居してくる方、させられてくる方もいらっしゃいます。

 次の方の場合は、本人に何らかの身体上の障害があり、あるいはそれにより家族の生活に支障が生じ、やむを得ず老人ホームで暮らしています。
 この方の場合は、本人は家で暮らしたいという希望をはっきりと持っていますが、事情により老人ホームで暮らしています。

 それぞれ事情はあるにせよ、どちらの方の場合も、老人ホームで暮らすことを本人が望んではいないのです。
 望んでいない方にとってそこは、牢屋同然なのかもしれません。

そもそも望んで老人ホームには入らない

 そもそも、老人ホームなどに入りたいと自ら望んで入る方がいるでしょうか?
 ごくわずかではありますが、そういう方もいらっしゃいます。しかし、ほとんどの方は自らの希望ではなく入っている方なのです。

 介護サービスと他のサービス業とのもっとも大きな違いのひとつはそこだと思います。

だから介護はむずかしい

 普通のサービスの場合は、サービスを受けたくて、サービスを望んでお金を払って受けます。
 ところが介護サービスの場合は、自ら望んでいないことに対してお金を払ってサービスを受けるのです。受けさせられるのです。

 私たち介護職は、望まない方に対して介護サービスを提供しているのです。
 だから介護はむずかしいのです。

義務教育の苦痛と好きな先生

 例えば、勉強が嫌いな人にとって、学校の授業は苦痛でしかないでしょう。

 私は、子供の頃は勉強が大嫌いで、義務教育と高校しか出ていません。
 小学校の頃の記憶はあまりありありませんが、中学校の授業は苦痛でしかありませんでした。
 望んでいない授業を受けさせられるわけですから、授業中机に縛り付けられているようなものです。

 そんな大嫌いな学校の授業でも、「先生が好き」というだけで楽しくなることはありませんでしたか?私はありました。
 勉強は大嫌いで、ちっとも出来はしないけれど、あの先生の授業だけは楽しい、そんな授業、そんな先生が居ませんでしたか?

 学級担任の先生が、大嫌いな先生だったら地獄ですね。
 一年間、地獄のような日々をおくらなければなりませんから。

 逆に、担任の先生が大好きな先生だったら一年間ハッピーですね。
 私は中学三年の時、大好きな先生が担任になったので、中学の最後をとてもハッピーな気分で過ごすことができました。
 そして、勉強は大嫌いでしたが、中学三年の時だけは飛躍的に勉強の成績が伸びました。

 学校と老人ホームは全く別のものだけど、私たち介護職が大好きな学校の先生のようになれたら、そこに望んで入っていない方もハッピーに過ごすことができるようになるのではないでしょうか。

「牢屋」にするのも「楽園」にするのも介護職

 老人ホームを「牢屋」みたいに言う入居者のことを最初に書きましたが、中には「ここは天国」「ここは楽園」みたいに言ってくださる方もいらっしゃいます。
 そうした方は、望んで入居はしていないけれど、そこにハッピーを見つけられているのではないでしょうか。

 老人ホームを「牢屋」にするのも「楽園」にするのも、施設設備や制度ではなく、私たち介護職なのです。
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